子供が産まれました。
今までふたりで普通に暮らしていたところにもう一人 「人間」 が増えたのです。
当然といえば当然ですが、いままで居なかったのに、なのにそこにいる。
もうこれからずっとそこにいるのです。
未だかつて経験したことのない、とても不思議な感覚。(初めてなので)
妻の希望で、いわゆる 自然分娩 での出産だった。
妻が自分で調べて実家近くで自然分娩をやっている助産婦(助産師)さんを見つけてきた。
自然分娩とは簡単にいうと
病院の分娩室でなく、昔のように自宅、若しくは自宅に近い状態で好きなように落ち着いて産む
というもの、
さすがに自宅出産となると色々と心配であったが、産院内の和室で出産することも可能と聞き
賛成した。両方の利点を生かせる方法である。
和室の布団の上で普通に産んで、入院中もそのままそこで暮らすのだ。
どちらにしても夫の協力が重要のようで、仕事の都合で立会いは非常に難しいと思われたが、
助産婦さんの「両親が強く望む事で赤子は不思議と希望する日に産まれるもの」との言葉を
信じてお任せする事にした。
で、6月某日、長い仕事が終わった直後、里帰りしている妻から電話が、
「陣痛らしいのがきた。」とのこと、予定日より10日も早くであった。この日を逃すとまた仕事が
当分続き、しばらくの間駆けつけることが非常に難しくなる状況であった。
速攻、車をとばして駆けつける。
夕方妻の実家に到着するもまだ陣痛の間隔も長く、余裕の表情を見せていた。
ホット一息、食事をしたり、記念写真を撮ったりして過ごす。入院準備も完了。
いよいよ父親になるのかなー
とふと思うが実感はない。
陣痛の間隔が短くなり、10分を切ったので病院に向かう。
未だかつて無い安全運転で、21時頃病院着、そして入院。妻のご両親にも付き添っていただく。
ありがたい。
陣痛の度に痛みが増しているらしく時折妻の顔が痛そう。でも冗談も出てとても和やかである。
助産師さんと父親になる私とで必死に妻の腰をマッサージ、これをやると結構楽になるらしく
ひたすら続ける。0時を回ると仕事明けの睡魔が襲ってくる。眠い・・・。
皆が交代で妻の陣痛の間隔に合わせて、半分寝ながらのマッサージ。
午前1時を回ってからいよいよ出産の体制に入る。事前に練習したように僕が座椅子に座って妻の下になる。ここからが長い。
これから一体何時間かかるのだろうか。2時間か、5時間か。心配しても始まらない。
家族2人の重みを全身に受けてかなり辛い姿勢。
突然の破水、「パシャッ」と水風船を割ったような音がはっきりと聞こえた。
これには驚いた。
頭が見えてきた。時折我が子の心音が弱くなるのがやたら気になる。時折落ちるとのこと。
臍の緒が巻き付いている可能性もあるらしく心配になる。
この一進一退がとても長い。早く生まれてくれと祈るような気持ち。
子供の体力は何時まで保つのか、心配。
妻が陣痛に耐えるたび体に力がはいる。そして肘が僕の腿に食い込む、半端でなく痛い。
僕はこの程度の痛みにも我慢できなかった。
頭が見え出してからがとても長い、妻も辛そう。眠気はもうない。
最後には姿勢を変えて産み落とした。頭が出て肩から下は一気に出てきた感じだった。
途切れがちで苦しそうな産声が聞こえた。
産まれた・・・。
我が子は体を拭かれてすぐにそのまま妻の胸に乗せる、僕の目からは涙がこぼれる。
超音波で事前に判っていたが男児だ。やっぱり嬉しいな。
妻の胸に乗せたとたん泣き止んだのが不思議だ。
まだ肺に羊水が入っているので苦しそうに呼吸しているのが心配だったが、
そのうち飲んでしまうと聞いて安心。
しばらくそのままの状態で我が子とご挨拶。話し掛けたり、へその緒をいじったりする。
臍の緒は結構太く、白い。太い血管がまだ脈打つのが触って判る。
へその緒を切るのは僕の役目。結構固く切りづらかった。はさみで力を入れて切る。
これで我が子はめでたく独り立ちである。もうあの居心地の良いお腹には戻れないのだよ。
と言い聞かせる。これからは辛い世間の風に当たるのだ。
お腹から出てきた胎盤は思ったより大きかった。まるでレバーみたい。内側から引いて取り出したので
裏返っている。これも羊膜を広げてみたりして皆であれこれ言いながら観察した。
よくもまぁこんな中に1年近くも居たものだ。
臍の緒は記念に持って帰ることにした。そのまま部屋でぶら下げて乾燥させる。長さは30センチぐらい。
産まれて判ったのだが我が子は顔を上向きにして産まれてきたそうだ。産道で上手く回れなかったみたい。
ちゃんと下をむいていたら、かなりの安産だっただろうとのこと。
うーん、産まれた時からひねくれた子供だ。きっと俺に似たのかと思う。
我が子はタオルにつつんでしばらく僕が預かる。とても小さく温かい。
普通の出産なら父親は全然触らせてもらえないはずだけどしばし独占する。うれしー。
まだ何も解らんだろうけど、ついいろいろ話し掛けてしまう。
産んでからの妻がとても辛そう。こちらの話にも返事できないくらい疲れ切っていた。
我が子と一緒に励ますが、聞こえてないみたい。しきりに痛がっている。
お産が命にかかわったという昔話も納得できた。
産湯には助産師さんのご指導で僕が入れた。おっかなびっくり、ぎこちない。
我が子やはり永く住み慣れたお湯の中のほうが気持ち良く落ち着くようだ。
その後体重測定。2914グラムであった。
暑くも無く、寒くも無くとても良い時期であったと思う。
その後もうとっくに日は昇っていたが、僕は疲れ果て眠ってしまった。
あぁ、これが「川の字」なんだなぁ。
目がさめたら早く名前を決めてやろう、と思いつつ。
大仕事本当にお疲れさま。でもこれからも大変だよ。
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